アグリパワースーツ研究結果について

1.研究題目

膝サポーターとアグリパワースーツの筋電図による効用測定

2.研究目的

アグリパワースーツの着用が若年男性の作業負担度を軽減させるかどうかについて明らかにすることを目的とした。

3.方法

(1) 研究参加者
研究参加者として、兵庫県立大学環境人間学部 内田教授の元、所属の男性6名を選択した。

(2) 作業内容
作業内容は、鉄製の重量物の拳上・拳上保持・降下作業(写真1)、および前かがみの座位姿勢から重量物を右方向へ横移動させる作業(写真2)とした。
拳上・拳上保持・降下作業は、床面より高さ15cmの台の上に置かれた鉄製の重量物を、各研究参加者の腰部高まで拳上し、その後、およそ2秒保持し、元の位置へ戻す作業とした。この作業を5kg、10kg、15kgの3回、アグリパワースーツ着用の効果を確認するため、「アグリパワースーツ着用」と「同着用なし」の2条件下、計6回繰り返した。
また右方向への横移動作業は、膝を床につき前かがみの姿勢から鉄製の重量物を腰の高さまで挙上し、その後、右方向へ体幹をねじりながら重量物を右方向90度の位置の床に降下させる作業とした。
「着用なし」と「アグリパワースーツ着用」の2条件下の間には、およそ5分間の間隔をおいた。

重量物挙上の実験

(3) 調査検討項目
調査検討項目として、「年齢」「学年」「身長」「体重」「握力」「背筋力」「主観的運動強度(RPE、Rating of Perceived Exertion)」「皮膚表面筋電位(腰部脊柱傍起立筋L2-3間)」を採用した。作業時における腰部負担評価項目は、先行研究(表1)に基づき選択した。
主観的運動強度(RPE)は、運動強度を心理的な尺度で表したものであり、スウェーデンのBorg博士により数値化、得点化が行われたことから、Borgスケールと呼ばれている。
本研究においては、得点を0、0.5、1から10までの12段階で評価する修正Borgスケールを用いた。 皮膚表面筋電位は、重量物の把持から拳上、降下までの腰部表面筋電位の総積分値(得られた値は1秒間あたりに補正)を計測した。

(4) 分析方法
重量物5kg、同10kg、同15kgそれぞれの拳上時における「着用なし」「アグリパワースーツ着用」各時の修正Borgスケール得点平均値、および皮膚表面筋電位総積分値平均値を、重量物5kg、同10kg、同15kgごとそれぞれ対応サンプルによるWilcoxonの符号付き順位検定を用いて比較検討した。
統計学的分析にはIBM SPSS Ver.22を用いて、有意確率5%未満をもって有意差ありとした。

4.結果

(1)研究参加者の年齢、身長、体重、握力、背筋力について
研究参加者の年齢、身長、体重、握力(右・左)、背筋力の各平均値、各標準偏差は表2に示す如くであった。身長、体重、握力、背筋力の全国平均値(19歳)をみると、身長171.07cm、体重62.4kg、握力42.7kg、背筋力149.4kgであった。
本研究参加者は全国平均と比較して身長は高く、体重が平均的であり、握力はやや強いものの、背筋力は低いことが示唆された。

●研究参加者の年齢、身長、体重、握力(右・左)の平均値、標準偏差

研究参加者 度数 平均値 標準偏差
年齢(歳) 6 19.8000 .44721
身長(cm) 6 176.5600 4.18665
体重(kg) 6 62.8200 3.62864
右握力(kg) 6 40.8000 4.97353
左握力(kg) 6 37.6500 3.27521
背筋力(kg) 6 108.5000 17.38965
背筋力(アグリパワースーツ着用時)(kg) 6 112.0000 16.91449
有効なケースの数 (リストごと) 6    


(2)研究参加者の修正Borgスケール得点について
重量物5kg、同10kg、同15kgそれぞれの拳上時、右横方向移動時における「アグリパワースーツ着用」「同着用なし」各時の修正Borgスケール得点平均値は、図1、図2に示す如くであった。
アグリパワースーツ未着用時より同着用時の方が、重量物10kg挙上時、および重量物15kg右横方向移動時の各修正Borgスケール得点は有意に低かった。
すべての作業時ではないが、アグリパワースーツの着用により主観的運動強度は低下することが示唆された。

重量物挙上の実験 重量物挙上の実験

5.結論

本研究は、アグリパワースーツの着用が若年男性の作業負担度を軽減させるかどうかについて明らかにすることを目的として実施した。
研究参加者として兵庫県立大学環境人間学部の男性6名、調査検討項目として研究参加者の年齢、身長、体重、握力(右・左)、背筋力、修正Borgスケール、腰部脊柱傍起立筋(L2-3)の皮膚表面筋電位総積分値(1秒あたりに補正)を、それぞれ選択した。
分析した結果、以下の知見が得られた。

(1) 本研究参加者は全国平均と比較して身長は高く、体重が平均的であり、握力はやや強いものの、背筋力は低いことが看取された。
(2) アグリパワースーツ未着用時より同着用時の方が、重量物10kg挙上時、および重量物15kg右横方向移動時の各修正Borgスケール得点は有意に低かった。
同作業を実施するにあたり、アグリパワースーツの着用により主観的運動強度は低下することが示唆された。
(3) アグリパワースーツ未着用時より同着用時の方が、重量物5kg挙上時、同10kg挙上時、同15kg挙上時、いずれの場合においても、腰部表面筋電位の総積分値(1秒あたり)は有意に低かった。
同作業を実施するにあたり、アグリパワースーツを着用することにより、腰部周辺部位の筋労作量は低下することが示唆された。



若年男性における重量物挙上作業時の筋負担度は、アグリパワースーツの着用により有意に軽減されることが明らかになった。すべての作業時ではないが、アグリパワースーツの着用により、主観的な運動強度も有意に軽減されることが示唆された。こうした特性を有する同スーツの活用により、若年男性はもちろん、高齢者や女性といった体力弱者、筋力弱者の社会参加、就労機会の拡大、種々の作業者の就労年齢の延伸といった副次的効果が見込まれ、多大な社会的貢献が期待される。

お問い合わせ

お名前
メールアドレス
メッセージ

お電話でのお問い合わせ
0120-960-041
10:00~18:00
担当:北浦まで

注文はこちら